作業者なのに、なぜ調整まで背負うのか
SE現場で感じた「役割のあいまいさ」と向き合う話
システム開発の現場では、「作業者」としてアサインされているはずなのに、気づけば他部署との調整、進捗説明、課題整理、関係者への確認まで任されていることがあります。
もちろん、SEの仕事は単に手を動かすだけではありません。仕様を理解し、影響範囲を考え、関係者と認識を合わせながら進める力は必要です。ですが、現場で問題になるのは「どこまでが作業者の役割なのか」が曖昧なまま、調整責任まで個人に乗ってしまうことです。
他課への確認は、単なる技術確認で終わらないことがある
たとえば、同じ部内だからという理由だけで、面識のない他課へ直接確認に行くよう求められるケースがあります。内容を把握している担当者が確認すること自体は合理的に見えます。しかし、課をまたぐ話になると、単なる技術確認では済まない場合があります。
相手部署の優先順位、課としての方針、過去の経緯、責任範囲。こうしたものが絡むと、作業者だけで調整するには限界があります。本来は、課長やリーダーが交通整理し、誰に、何を、どの立場で確認するのかを整えたうえで進めるべきです。
現場で一番しんどいのは、作業そのものよりも「立場が弱いまま調整だけを任されること」です。
立場が曖昧なまま動くと、担当者が板挟みになる
担当者として確認に行ったつもりでも、相手から見れば「その課としての正式な相談」と受け取られるかもしれません。逆に、こちらは正式な依頼のつもりなのに、相手には雑な問い合わせと見られるかもしれません。このズレがあると、話が進まないだけでなく、担当者個人が板挟みになります。
SEの仕事では、技術力だけでなく調整力も重要です。ただし、調整力とは「何でも自分で抱える力」ではありません。むしろ、誰が判断すべきか、誰を通すべきか、どこまでを自分の責任として進めるかを切り分ける力です。
課題が整理されていないまま人を動かすと無理が出る
私が現場で感じたのは、課題が整理されていない状態で人を動かそうとすると、必ずどこかで無理が出るということです。
- 何を確認したいのか
- なぜその確認が必要なのか
- 誰の判断が必要なのか
- いつまでに決める必要があるのか
- 決まらない場合、何に影響するのか
このあたりが曖昧なまま他部署へ相談すると、相手も答えにくくなります。そして、答えが返ってこない、認識がズレる、追加確認が増える。結果として、作業者の負担だけが増えていきます。
まずは課題を一枚に整理する
こういうときは、いきなり調整に行くのではなく、まず自分の中で課題を一枚に整理するのが有効です。
テーマ、課題、対応案、確認したいこと、担当、期限。これだけでも十分です。完璧な資料である必要はありません。大事なのは、「何を決めたい会話なのか」を見える形にすることです。
そのうえで、課をまたぐ調整が必要なら、上長にこう相談できます。
技術的な確認内容は整理しました。
ただ、他課との正式な調整になるため、誰から依頼する形がよいか確認させてください。この言い方であれば、単なる不満ではなく、役割整理の相談になります。自分が逃げているのではなく、調整の進め方を適切にしたいという伝え方になります。
若手SEや中堅SEほど抱え込みやすい
若手SEや中堅SEは、真面目な人ほど「自分がやらなければ」と抱え込みがちです。しかし、課をまたぐ話、方針判断が必要な話、責任範囲が曖昧な話まで一人で抱える必要はありません。
作業者がすべきことは、課題を見える化すること。リーダーや管理者がすべきことは、判断と調整の場を整えることです。
この役割分担ができていない現場では、声の大きい人、真面目な人、断れない人に仕事が偏ります。そして、調整が得意な人ほど、さらに調整を任されていきます。
調整力とは、全部自分で何とかする力ではない
SEとして成長するうえで、調整力は大切です。ただし、それは「全部自分で何とかする力」ではありません。
現場を前に進めるために、課題を整理し、判断者を明確にし、必要な人を巻き込む力です。
作業者なのに調整まで背負って苦しくなったときは、まずこう考えるとよいです。
これは自分が答える問題なのか。
それとも、誰かに判断してもらうべき問題なのか。まとめ
この切り分けができるだけで、現場での消耗はかなり減ります。SEに必要なのは、何でも抱える根性ではなく、課題を構造化して、正しい場所へ渡す力なのです。
