SEがAWSで静的サイトを作ってみた
S3・CloudFront・Route 53構成で個人サイトを運営する理由を、WordPressとの違い、費用感、学習効果、セキュリティ、カスタマイズ性の観点から整理します。
AWS静的サイト構成
Astro / Markdown
push
自動ビルド
静的ファイル配置
HTTPS配信 / CDN
ブラウザ
独自ドメイン管理
SSL証明書
Astroで作成した記事をGitHubへ反映すると、GitHub Actionsが自動でビルドし、生成された静的ファイルをS3へ配置します。読者はCloudFront経由でサイトへアクセスし、Route 53で独自ドメインを管理します。
S3・CloudFront・Route 53構成で個人サイトを運営する理由
個人サイトを作るとき、多くの人が最初に考えるのはWordPressだと思います。
レンタルサーバーを契約して、WordPressをインストールして、テーマを選んで、記事を書き始める。情報も多く、初心者でも始めやすい方法です。
私も最初は、個人サイトを作るならWordPressが無難なのではないかと思っていました。
しかし、SEとしてサイトを作るなら、別の選択肢もあります。
それが、AWSを使った静的サイト構成です。
今回、自分のサイトは、Astroで静的HTMLを生成し、GitHub Actionsでビルド、S3に配置し、CloudFrontで配信、Route 53で独自ドメインを管理する構成にしました。
記事公開から配信までの流れ
流れとしては、次のような形です。
Astroで記事を書く。
GitHubにpushする。
GitHub Actionsで自動ビルドする。
生成されたHTMLやCSSをS3に配置する。
CloudFront経由でHTTPS配信する。
Route 53で独自ドメインを向ける。最初は少し難しそうに見えます。
しかし、SEにとっては、この構成そのものが学習になります。S3、CloudFront、Route 53、ACM、GitHub Actions、CI/CD、静的サイト生成。これらを実際に触りながら、個人サイトを運営できるからです。
料金面で見たWordPressとAWS静的サイト
特に大きいのは、料金面です。
WordPressは便利ですが、基本的にはサーバー代が毎月かかります。たとえばWordPress.comの有料プランは、3年契約時で月額2.75ドルから、年払いでは月額4ドルからと案内されています。プラグイン利用や広告非表示、サポートなどが含まれるため、管理が楽な反面、固定費として見ておく必要があります。
国内のWordPress対応レンタルサーバーも、月額数百円から千円台以上の費用がかかります。たとえばConoHa WINGでは、契約期間によってベーシックプランが月額659円、844円、970円、1,210円などで案内されています。
一方で、AWSの静的サイト構成は、アクセスが少ない個人サイトであればかなり安く抑えられる可能性があります。
S3は、保存しているファイル容量とリクエストに応じた従量課金です。静的サイトの場合、置くものはHTML、CSS、JavaScript、画像が中心です。動画や大量画像を置かない限り、容量はそれほど大きくなりません。
CloudFrontについても、AWSはCloudFrontからのデータ転送について、月1TBまで無料枠を提供しています。また、HTTP/HTTPSリクエストも月1,000万件まで無料枠があります。個人ブログ規模であれば、最初からこの上限に届くことは少ないはずです。
Route 53は、ホストゾーン1つあたり月0.50ドルがかかります。ここにドメイン取得・更新費用が別途かかります。つまり、完全無料ではありませんが、サーバーを常時動かすWordPress構成と比べると、静的サイトはかなり低コストで始めやすい構成です。
料金イメージ比較
WordPress
AWS静的サイト
ホストゾーン費用
保存容量・リクエスト課金
無料枠内なら低コスト
WordPressは毎月のサーバー代が固定費になりやすい一方、AWS静的サイトはアクセス量や保存容量に応じた従量課金です。個人サイトの初期段階では、低コストで運営しやすい可能性があります。
WordPressの強みもある
もちろん、WordPressにはWordPressの強みがあります。
- 管理画面から記事を書ける
- テーマやプラグインが豊富
- お問い合わせフォームやSEO設定も簡単
- 非エンジニアでも運用しやすい
- 複数人で記事を書く場合も管理しやすい
この手軽さは大きなメリットです。
WordPressとAWS静的サイトの違い
WordPress型
AWS静的サイト型
WordPressは管理画面・テーマ・プラグイン・データベースを使う動的サイトです。一方、AWS静的サイトは事前に生成したHTMLを配信する構成です。管理機能は少ないですが、構成がシンプルで、SEなら自分で保守・改善しやすい点が魅力です。
ただ、SEが自分のサイトを持つなら、「簡単に作れる」だけでなく、「自分で仕組みを理解して保守できる」ことも価値になります。
AWS静的サイトがSEの実践経験になる理由
AWS静的サイトの良さは、まさにそこです。
- サイトの構成を自分で理解できる
- デプロイの流れを自分で改善できる
- CloudFrontのキャッシュや404対応を学べる
- GitHub ActionsでCI/CDを実践できる
- 記事管理をMarkdownやAstroのページとして行える
- デザインもコードで自由に修正できる
これは、単なるブログ運営ではなく、ポートフォリオにもなります。
「AWSで個人サイトを運用しています」と言えることは、SEとしての実践経験になります。S3、CloudFront、Route 53、GitHub Actionsを自分の手でつないでいるので、資格学習だけでは得られない実務感があります。
静的サイトはセキュリティ面でもシンプル
また、静的サイトはセキュリティ面でもシンプルです。
WordPressの場合、ログイン画面、プラグイン、テーマ、データベース、PHPのバージョン管理など、保守すべき要素が多くなります。放置すると、脆弱性対応や不正ログイン対策が必要になります。
一方、静的サイトは、基本的に完成済みのHTMLを配信するだけです。もちろんAWS側の権限設定やS3の公開設定、CloudFrontの設定には注意が必要ですが、アプリケーションサーバーやデータベースを持たない分、攻撃面は小さくなります。
SEとしては、この「シンプルさ」はかなり魅力です。
コードで自分のサイトを育てられる
さらに、自分でカスタマイズしやすい点も大きいです。
- 記事カードのデザインを変えたい
- カテゴリーごとに一覧を作りたい
- 新着記事をスクロール表示したい
- Udemy講座への導線を作りたい
- AmazonアソシエイトやAdSenseを入れたい
- プロフィールページを改善したい
こうした変更を、自分でコードを直して対応できます。
WordPressでもカスタマイズはできますが、テーマやプラグインに依存しやすくなります。便利な反面、「どこを直せばよいのか分からない」「プラグイン同士が干渉する」「テーマ変更で崩れる」といった問題も起きます。
AWS静的サイトなら、HTML、CSS、Astroの構成を理解していれば、自分で直せます。
これはSEにとって大きなアピールポイントです。
AWS静的サイトが向いている人・向いていない人
ただし、誰にでもAWS静的サイトをおすすめするわけではありません。
とにかく早くブログを始めたい人。管理画面から記事を書きたい人。技術設定に時間を使いたくない人。こういう人にはWordPressの方が向いています。
一方で、AWSを学びたいSE、クラウド実績を作りたい人、自分でサイトを保守したい人、GitHub ActionsやCI/CDを実践したい人には、AWS静的サイトはかなり良い選択肢です。
まとめ
個人サイトは、単なる情報発信の場所ではありません。
SEにとっては、自分の技術を試す実験場にもなります。
AWSで静的サイトを作ることで、クラウド、DNS、CDN、CI/CD、セキュリティ、フロントエンド、運用コストまで一通り触ることができます。
WordPressで手軽に始めるのも正解です。
しかし、SEなら、自分で作って、自分で直して、自分で育てるサイト運営にも価値があります。
私にとって、AWS静的サイト構成は、単なる節約ではありません。
クラウドを学びながら、自分のブランドサイトを育てるための実践環境なのです。
