AI×レガシー

AIでレガシーシステム解析は変わる

チャットで質問するだけでなく、エージェントに現場を見せる

レガシーシステムの保守では、プログラムを読むこと以上に、関連資料を探すことへ時間を使います。

設計書は共有フォルダにある。
COBOLソースは別の資源管理環境にある。
COPY句は別フォルダにある。
実行JCLやシェルは別管理になっている。
テスト結果はExcelで残されている。

障害や改修依頼が発生すると、まず必要な資料を集め、関係するプログラムを探し、処理の流れを頭の中で組み立てなければなりません。

この作業は、AIを使うことで大きく変えられる可能性があります。

プログラムが入ったフォルダをAIへ見せる

これまでの生成AI活用は、チャット画面へ質問を書く方法が中心でした。

「このCOBOLを説明してください」
「このエラーの原因は何ですか」
「この処理を修正してください」

この使い方でも十分便利です。しかし、毎回ソースコードを貼り付け、関連する設計書を説明し、前提条件を文章で補足する必要があります。

1ファイルだけなら対応できますが、レガシーシステムは1本のプログラムだけで動いているわけではありません。

メインプログラム、サブルーチン、COPY句、JCL、シェル、パラメータ、入出力ファイル、設計書など、複数の資源が関係します。

そこで有効なのが、調査対象の資源を一つの作業フォルダへまとめ、そのフォルダをVS Codeで開き、Codexに参照させる方法です。

例えば、次のような構成にします。

legacy-analysis/
├─ source/
│  ├─ main.cbl
│  └─ subroutine.cbl
├─ copybook/
│  └─ customer.cpy
├─ job/
│  └─ execute.jcl
├─ design/
│  ├─ basic-design.md
│  └─ file-layout.md
├─ test/
│  ├─ input-data.txt
│  └─ expected-result.txt
└─ README.md

この状態で、次のように依頼できます。

AIへ毎回すべてを説明するのではなく、AIが必要なファイルを読みながら調査できるようになります。

図解:エージェント型AIで解析する流れ

設計書・COBOL・COPY句・JCLを整理

作業フォルダをVS Codeで開く

Codexが複数ファイルを横断調査

影響範囲・処理概要・差異を出力

人間のSEが内容を確認

必要に応じて修正・テスト

実際に発生する課題

フォルダを指定すれば、すべて自動的に解決するわけではありません。

設計書が古い。
同じ名前の資源が複数ある。
不要なバックアップファイルが混在している。
文字コードが統一されていない。
COPY句の参照先が不足している。
テストデータの意味が説明されていない。

このような状態では、AIも誤った前提で解析する可能性があります。

AI活用の前に、人間が最低限の整理をする必要があります。

これらをREADMEや作業指示書として残しておくと、解析精度を上げられます。

経験豊富なSEほど抵抗を感じることもある

現場では、40代以上の経験豊富なSEを中心に、AIへプログラムや設計書を読ませることへ抵抗を感じているように見えることがあります。

ただし、これは単純な年齢の問題ではありません。

長く現場を経験している人ほど、誤修正の怖さ、情報漏えいのリスク、設計書と実装が一致しない現実を知っています。そのため、AIが出した回答を簡単には信用できません。

その慎重さは必要です。

問題は、AIを信用してすべて任せるか、まったく使わないかの二択にしてしまうことです。

AIには、次のような補助を任せられます。

経験豊富なSEの知識を置き換えるのではなく、その知識を重要な判断へ集中させるために使うべきです。

チャット型からエージェント型へ

現在は、AIへ質問し、回答を受け取るチャット型の使い方が主流です。

しかし、これから重要になるのは、AIに作業環境と目的を与え、複数のファイルを調べ、必要なコマンドを実行し、結果をまとめてもらうエージェント型の活用です。

ただし、エージェント型だからといって、すべてを自動で任せるわけではありません。

AIが調査する。
人間が結果を確認する。
AIが修正案を作る。
コンパイルとテストを実行する。
人間が業務結果とリスクを判断する。

この役割分担が重要です。

特に自治体、金融、保険、医療などのレガシーシステムでは、顧客情報、個人情報、社内資産を許可なく外部AIへ渡してはいけません。

会社のAI利用ルール、契約、データ保持条件、利用可能な環境を確認したうえで使う必要があります。

エージェント型AIを現場へ広げたい

レガシーシステムには、長年の業務知識が詰まっています。

古いから捨てるのではなく、AIを使って読み解き、設計書を補い、影響調査とテストを効率化する。その使い方を現場へ広げる価値は大きいと思います。

まずは小さなプログラムと、公開可能なサンプル資源から始める。AIが出した結果を経験者がレビューする。効果と危険性の両方を確認しながら対象を広げる。

私は、質問に答えてもらうだけのAI活用から、作業フォルダを共有して一緒に調査するエージェント型の活用へ進みたいと考えています。

そして、AIによるレガシー解析を単なる流行で終わらせず、現場で安全に使える方法として、自分から発信していきたいと思います。